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KISSTORY : 1980 Part2

kisstory1980
ピーターの脱退後、KISS はピーターの後任となるドラマー探しに躍起になった。その後の予定を考えると6月17日までには新しいドラマーが決まっている必要があった。有名、無名を問わず多くのドラマーの書類が手元に届けられていたが、メンバーはできるだけ無名でなおかつ才能のあるドラマーを求めていた。なぜなら、当時はまだメンバーの素顔や素性はミステリアスなままであったため有名で顔が知られているドラマーをメンバーに迎えることができなかったのだ。

新しいドラマーを募集するにあたって、ジーン、ポール、エースからの希望は「歌えること」「ダブル・バスドラムであること」の2点であったと言う。
※ということはエリックが元からダブル・バスドラムだったのではなく、KISS 側からの希望でダブル・バスドラムを使用したということなのだろうか!?
※オーディションには同じ1980年に Rainbow のドラマーとなる Bob Rondinelli も来たと言われている。

6月17日のデッドラインになっても後任のドラマーが決まらなかったが、翌日になって Paul Charles Caravello(以下、しばらくは Paul Caravello と記載) から応募書類が Aucoin マネージメントに届いた。

youngcaravelloPaul Caravello はそれまで在籍していたバンドを去り、音楽活動自体を辞めようかと本気で考えていた。しかし友人が彼に KISS がドラマーのオーディションを行うことを教えた。Paul Caravello は最初、友人の話を聞いても「そんな冗談言うな。」と思っていたが、やはり音楽の道をあきらめきれずに翌日、KISSのオーディションを受ける決心をした。
彼は “UNMASKED” アルバムを購入し、裏に書いてあるAucoin マネージメントに連絡を取った。履歴書、写真、演奏と歌を録音したテープを送るように言われた。Paul Caravello は急いでそれらを集めたが、送付したのは締め切りの1日後、6月18日であった。遅れるのはわかっていたが Paul Caravello は完璧なものを送りたかったのだ。手書きで丁寧に履歴書を作成し、目立つようにオレンジ色のフォルダーに書類を詰めた。
この時送付されたテープには “SHANDI” を歌ったもの、”TORPEDO GIRL” でドラムを叩いたもの、また Van Halen の “YOU REALLY GOT ME”、”THE CRADLE WILL ROCK” のドラムを叩いたものが収録されていた。(この時の “SHANDI” は2011年にリリースされたアルバム “Unfinished Business” に収録されている)
◆Eric Carr Audition Tapes – Shandi

◆Eric Carr Audition Tapes – Torpedo Girl

オレンジ色のフォルダー作戦が功を奏したのか、KISS のマネージャーであるビル・オーカインがマンハッタンのオフィスで面接を依頼してきた。面接はうまく進み、最後にビルが5曲のオーディション用曲のリストを渡した。課題曲となっていたのは “DETROIT ROCK CITY”、”STRUTTER”、”IS THAT YOU?”、”FIREHOUSE”、”BLACK DIAMOND” の5曲だった。その際に「そのヒゲも剃って来るように」と言われた。
翌週の月曜日、午後1時30分。Paul Caravello はニューヨークにある Star Rehearsal Studios にいた。Paul Caravello は緊張した。また、緊張したと同時に KISS のメンバーの素顔を見れるのかとドキドキもしていた。オーディションが進み、演奏する時間となった。スタジオに入ると巨大なダブル・バスのドラム・セットが目に入った。セットの前にはビデオ・カメラが据えられている。スタジオの隅の大きなテーブルには料理が並べられ、KISS のメンバーのシルエットが見えた。簡単なインタビューの後、演奏に入った。”BLACK DIAMOND” のボーカルは気に入られたようであった。しかし、演奏が進むうちに Paul Caravello は何かおかしいことに気づく、自分が知っている通りに KISS は演奏してくれないのだ。Paul Caravello はスタジオ録音バージョンで練習をしてきたのだが、KISS が演奏しているのはライブ・バージョンであった。演奏はたびたび中断してしまったが、エースが言った。「彼が演奏しているのはスタジオ・バージョンだ。俺達もそっちで演奏しよう。そうすれば演奏が止まることはないよ。」Paul Caravello はエースに救われたのだ。 オーディションは1時間程で終わった。一旦はスタジオを後にした Paul Caravello だが、すぐにひき返しビル・オーカインからもらったレターを差し出すと、「是非、これにサインをください!」と言ってメンバーのサインを貰ったそうだ。Paul Caravello はオーディションには受かるという強い自信とともに愛車であるダッジで会場を後にした。 オーディション演奏の1週間後、7月1日にビル・オーカインから「合格」の連絡が届いたが、受けたのは妹の Loretta だった。

1533892_607004372681653_863228886_nPaul Caravello はバンドのメンバーに迎えられるにあたって、名前を変える必要があった。バンドには既にポールがいたためだ(ポール・スタンレーのことではあるが、エースも本名はポール・フレーリーだ)。彼は自分自身の名前を Eric Carr とすることに決めた。エリックはガールフレンドが付けた名前で、KISS の他のメンバーと同様にシンプルで親しみ易い名前だった。カーは本名の Caravello を短くしたものだ。メイクも当初は鷹(あまりの酷さでチキン・メイクなんて呼ばれることもある)をイメージしたものだったが、フォックスのデザインとすることを自身で決めている。ステージ衣装についてはリハーサル中にポールがエリックのためにデザインをした。
*Eric Carr の他に Rusty Blades なんていう名前の候補もあったが、なんか違う…
*フォックスのデザインコンセプトを提案したのは Bill Aucoin だったという証言もある。

1980年7月22日にエリック・カーは KISS の新メンバーとして公式に発表された。デビュー・ライブは1980年7月25日にニューヨークの Palladium で行われた。Palladium はかつては Academy of Music と呼ばれた場所で1973年12月に KISS の契約後公式デビュー・ライブが行われたのと同じ会場である。このライブはその後行われるヨーロッパツアーのリハーサル的要素も含まれていたが、ニューヨーク近郊に住むファンには新しいドラマーを観ることができるチャンスとあって伝説的なライブとして記憶されている。ファンの目にはピーター脱退の悲劇を KISSはなんとか乗り越えることができると映った。
◆KISS LIVE IN The PALLADIUM 1980 BLACK DIAMOND

◆KISS 1980 07 25 New York, NY – Palladium TV Report

ツアーを開始するにあたってコスチュームもマイナーチェンジが行われた。エースは Dynasty ツアーと変わらなかったが、ジーンのコスチュームは全体に小さめになり色もシルバー基調から黒基調に変更された。ポールの衣装はよりシンプルに新調されている。

carr1stfox実はエリックの初期フォックス・メイクが使われたのはこのライブだけで、ライブ後すぐに形を変えている。
さまざまな事情にはよるが、この1980年7月25日のショーを最後に KISS がアメリカでフル・コンサートを行うことがなくなり、次回は1982年の12月に “Creatures Of The Night Tour” が始まった時となってしまう。つまり、アメリカでエースとエリックが同じステージに立ったショーはこの時だけとなってしまったのだ。

7月27日にエリックをテレビで初めて紹介する “Kids Are People Too” という子供番組の収録が行われた。司会の Michael Young が客席の子供たちに「KISS のメンバーで誰が好きか?」という質問をした時に1人の子が「ピーター・クリス!」と答えてしまうのだが、まだエリック加入の正式アナウンス直後であったために致し方のなかったことか…。
この番組は9月21日に全米のABC-TV網で放送された。
◆KISS intro Eric Carr – Kids Are People Too ’80

8月29日からは1976年から4年振りとなるヨーロッパ・ツアーがイタリアのローマで開始された。オープニングを務めたのは Iron Maiden だった。ヨーロッパでは30のショーが行われた。(イギリスでのショーだけは Girl がオープニングを務めた。Girl は、その後 L.A. Guns に加入する Phil Lewis と Def Leppard に加入する Phil Collen が在籍していたバンドだ。また、KISS の “DO YOU LOVE ME?” をカバーしてファースト・アルバムに収録したことでも有名だ。)

8月29日 ローマ Castel Sant’Angelo でのセットリスト
1. DETROIT ROCK CITY
2. COLD GIN
3. STRUTTER
4. CALLING DR.LOVE
5. IS THAT YOU?
6. FIREHOUSE
7. TALK TO ME
8. YOU’RE ALL THAT I WANT
9. 2,000MAN ~ Ace Solo
10. I WAS MADE FOR LOVIN’ YOU
11. NEW YORK GROOVE
12. LOVE GUN
13. Gene Solo ~ GOD OF THUNDER ~ Eric Solo
14. ROCK AND ROLL ALL NITE
15. SHOUT IT OUT LOUD
16. KING OF THE NIGHT TIME WORLD
17. BLACK DIAMOND

◆KISS – 1980-09-30 – Sporthalle, Cologne, Germany (Soundboard)

◆Kiss-You`re All That I Want (Live) 1980
※映像は後から合成で作成されたものだが、演奏は1980年のイギリス公演から

ヨーロッパに続いて、オーストラリアとニュージーランドに KISS は向かった。11月8日にオーストラリアの Perth でスタートしたツアーには45,000人クラスのスタジアムでのショーも予定されていた。オーストラリアでの KISS の人気は高く、チャート上の動きも良く、この初めてのツアーにはオーストラリア全体が狂乱と呼べるほどに歓迎し、商業的にも大成功を収めている。このツアーでは11回のショーが行われた。オーストラリアとニュージーランドではシングル “SHANDI” の売り上げも良く、チャートの5位と6位を各々で獲得している。そのため、セットリストにも加えられることとなった。

このツアーの時のことをジーンは後にこう振り返っている。ジーン「あの時のツアーはマニアックだったね。滞在中はホテルの最上階にある部屋から出られなかった。カーテンも閉めっぱなし。外ではヘリコプターに乗ったカメラマンたちが、望遠レンズで俺らの素顔を撮ろうとぶんぶん飛び回ってた。一方ではちょうど中東問題が深刻化していた。いたるところで爆弾騒ぎがあった。にも関わらず、オーストラリアの新聞は KISS の記事で埋め尽くされていた。例えば「キッス・ブーツ」というタイトルの記事は、俺たちが靴屋にブーツの修理を頼んだという内容で、俺たちのブーツの巨大写真が第一面を飾った。そんな中、俺たちのところに脅迫電話が来て、偽の爆弾予告があった。ホテルから避難せざるを得なくなり、当然のことながら翌日の新聞には“キッス爆弾騒動”って見出しが躍った。しかもシドニー・ヘラルドという高級紙のね。」

当然のことながらオーストラリアでのマーチャンダイズ商品の売り上げも過去最高を記録した。KISS アイスクリームと言うようなオーストラリア限定で発売された商品も多い。ただし、全ての商品が完売というわけでもなかった。KISS 帰国後には在庫の山を抱える商品もあり、マーチャンダイズ・ビジネスのやり過ぎによる反動が現れてきていることも痛感させられる時期でもあった。

11月9日にはサウンドチェックの際に収録された “IS THAT YOU?” と “TALK TO ME” の映像がオーストラリアの Countdown というテレビ番組で放送されている。
◆KISS [ Countdown Australian TV ’80 ] Is That You / Talk To Me

11月8日から12月3日まで行われたツアーは11回のショーに20万人を超えるファンを動員して幕を落とした。
*11月21日のショーはビデオ収録され、後日 “The Inner Sanctum” という名称で放送されている。
◆KISS – The Inner Sanctum – 1980

◆KISS-Detroit Rock City ( Live in Sydney 1980)

12月に “UNMASKED Tour” が終わると KISS はニューアルバムの構想を始める。当初はコンセプト・アルバムにするという予定もなかった。エリックが最初に KISS のメンバーとして録音した曲は “DEADLY WEAPONS,” という曲だがリリースはされなかった。
だが、エリックの叩くドラム・サウンドはこれまでの KISS のサウンドを大きく変えるほどのパワーを持っていた。
◆KISS – Deadly Weapons – demo

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